4月18日、東麻布にある「鮨 こん藤」へ。
麻布十番駅から歩いて6分ほど。住宅街にあるビルの3階に、天然の木曽檜を使った一枚板のカウンターが設けられています。店内はカウンター8席のみの、静かで落ち着いた空間です。
大将を務める近藤元貴氏は、京都の老舗料亭「京料理 木乃婦」で約5年間、日本料理を修業。その後、六本木の「鮨 由う」で江戸前鮨の技術を学び、2024年1月に「鮨 こん藤」を開きました。
京都で身につけた季節の表現や一品料理の技術と、江戸前鮨の仕事。その両方をひとつのコースで楽しめるのが、鮨 こん藤の特徴です。
お店は「京の美意識と江戸前の技巧の融合」を掲げていて、シャリには赤酢を使っています。
おまかせコースは27,500円(税込)。別途サービス料10%です。
この日は、蛤や山菜、筍、初鰹、桜鱒、蛍烏賊など、春から初夏へ向かう時期の食材が揃った構成。つまみから握り、2種類の甘味までいただきました。
つまみ
うすい豆餡と蛤の茶碗蒸し
最初は、小さく刻んだ蛤を入れた茶碗蒸しに、うすい豆の餡を合わせた一品から。
なめらかな茶碗蒸しに、うすい豆のやさしい甘みが重なります。
細かく刻まれた蛤は、噛むたびに貝の旨味が感じられ、春らしい穏やかな始まりでした。
北海道産 松川鰈
北海道産の松川鰈は、豊洲で朝8時に締めてもらったものだそう。
締めたてらしい身の張りがあり、噛むと淡泊な中から透明感のある旨味が広がります。
強い味付けに頼らず、魚そのものの状態の良さが伝わってくるお造りでした。
たらの芽の天ぷら
春の山菜、たらの芽を天ぷらで。
衣は軽く、たらの芽特有のほろ苦さと若々しい香りが残ります。
春に一度は味わいたくなる、季節をそのまま感じられる一品です。
行者にんにくの天ぷら
続いて、行者にんにくの天ぷら。
加熱することで香りは少しまろやかになりながらも、噛むと行者にんにくらしい風味がしっかりと広がります。
たらの芽とは異なる力強い香りがあり、山菜それぞれの個性を楽しめました。
春野菜の盛り合わせ
京都・山城産の筍、一寸豆、こごみ、つぶ貝を盛り合わせた一皿。
筍の歯切れ、一寸豆のほくっとした食感、こごみのほのかな苦味に、つぶ貝の弾力と旨味が加わります。
ひと皿の中で食感や香りが少しずつ変化し、春の食材を一度に楽しめる盛り合わせでした。
初鰹の藁焼き 新玉葱ソース
初鰹は藁焼きにし、新玉葱のソースを添えて。
この時期らしく、戻り鰹に比べると身質はあっさり。
藁の香ばしさと新玉葱の甘みが加わることで、淡泊な初鰹に奥行きが生まれます。
一方で、今回はやや塩気が強めに感じられました。
八寸
八寸は、磯つぶ貝の旨煮、鯛の子の生姜煮、新牛蒡のたたき。
磯つぶ貝は、噛みしめるほど貝の旨味が広がる味わい。鯛の子は、きめ細かな食感に生姜の香りが重なります。
新牛蒡のたたきからは、春の牛蒡らしいみずみずしさと土の香り。
小さな三品ですが、それぞれに異なる味と食感があり、日本酒とゆっくり合わせたくなる八寸でした。
ここから握り
鮨 こん藤では、福島県産の「里山のつぶ」をシャリに使用しています。
一般的な米より粒が大きく、粒立ちのよさと、さっぱりとした甘みが特徴の品種です。
「里山のつぶ」は福島県が11年かけて育てたオリジナル品種で、標高300m以上の中山間地域向けに作られたお米。
粒が大きいぶん調味料が入りやすいとされていて、赤酢のシャリと合わせるのは理にかなっています。
北海道産 桜鱒
握りの始まりは、北海道産の桜鱒。脂の乗った腹の部分を使い、浅葱と生姜を添えています。
桜鱒らしいやわらかな身と脂の甘みに、浅葱と生姜の香りが加わり、後味は軽やか。
春の握りの始まりに合う一貫でした。
鳥貝
桜鱒に続いては鳥貝。
春が旬の貝で、この時期にしか出会えない一貫です。
大きな鳥貝は食べ応え抜群。噛むとやわらかな弾力のあとに貝らしい甘みが残ります。
北海道産 神の国縞海老
北海道産の「神の国縞海老」。
縞海老の甘みが素直に感じられ、ほどよい弾力もあります。
大きな粒のシャリに対して海老の存在感があり、噛むほどに双方の甘みが重なっていきました。
三宅島の釣り鮪 156kg
鮪は、三宅島で釣り上げられた156kgの個体。
赤身、中トロ、大トロと、部位を変えていただきます。
赤身
赤身は、しっかりとした歯応えが印象的。
やわらかくほどけるタイプではなく、噛むことで鮪らしい旨味が徐々に広がります。
三種類の中では、赤身の身質を最も素直に感じられる一貫でした。
中トロ
中トロは、脂の甘みよりも鮪の酸味を強く感じる味わい。
脂のコクはありながら、酸が輪郭をつくるため後味は重くなりすぎません。
赤身から続けていただくことで、同じ個体の中で脂と酸味のバランスが変わっていくのがよく分かります。
大トロ
大トロは脂が豊かで、口の中に濃い旨味が広がります。
筋の存在は少し感じましたが、脂の後味は意外なほどすっきり。
濃厚さを残しつつも、重たさを長く引きずらない一貫でした。
小肌
小肌はやわらかな締め加減で、酢はやや強め。
身の食感は穏やかですが、酢の輪郭がはっきりとしているため、鮪三貫の脂を切り替える役割も感じられました。
富山県産 蛍烏賊
富山県産の蛍烏賊には、大葉、葱、ガリを合わせて。
この時期の蛍烏賊は味噌がたっぷりと入り、噛んだ瞬間に濃厚なコクが広がります。
そこへ大葉や葱の香り、ガリの酸味と辛味が加わり、蛍烏賊の濃さをほどよく散らしてくれます。
春の鮨ならではの、季節感がよく伝わる一貫でした。
馬糞雲丹
続いて、馬糞雲丹。
雲丹の甘みと濃厚さはしっかりと感じられます。
一方で、今回は雲丹のなめらかさに対して大粒のシャリの食感がやや目立ち、口の中での一体感が少し気になりました。
「里山のつぶ」の粒立ちはネタによってよく合いますが、やわらかな雲丹との組み合わせでは、好みが分かれそうです。
穴子
穴子は、温かな状態で握りたてを。
身はふっくらとやわらかく、口の中でほどけていきます。
コース終盤にほっとするような、穏やかな握りでした。
なめこの赤出汁
握りのあとは、なめこの赤出汁。
なめこのつるりとした口当たりと、赤味噌のコクが重なります。
握りをひと通りいただいたあとに、口の中を温かく整えてくれる一杯です。
玉子
最後に玉子をいただき、握りのコースは終了です。
2種類の甘味
白苺の苺大福
ひとつ目の甘味は、白苺と白餡を使った苺大福。
白餡のやさしい甘みが、白苺の繊細な風味を覆いすぎず、上品にまとまっています。
鮨のあとにも重たさを感じにくい甘味でした。
桜のアイスクリーム アーモンド
もうひとつは、桜のアイスクリーム。
桜の穏やかな香りに、アーモンドの香ばしさと食感を合わせています。
見た目だけではなく、味わいからも4月らしさを感じられる締めくくりでした。
お店情報
| 店名 | 鮨 こん藤 |
| ジャンル | 寿司、日本料理 |
| 住所 | 東京都港区東麻布2-12-4 リアルビルディング東麻布 3F |
| アクセス | 東京メトロ南北線・都営大江戸線「麻布十番」駅 6番出口から徒歩6分 |
| 電話 | 03-6459-1114(受付は営業日の12:00〜17:00) |
| 営業時間 | ディナー 17:30/19:30 開始の2部制 ランチ 12:00 開始(土曜と隔週水曜のみ) |
| 定休日 | 日曜・月曜 |
| 席数 | カウンター8席 |
| 予算の目安 | おまかせコース27,500円(税込)+サービス料10%/ランチ13,200円(税込) |
| 予約 | 予約制(Web予約が24時間受付) |
| 支払い | カード可(VISA・Master・JCB・AMEX・Diners)、電子マネー・QRコード決済も可 |
| 駐車場 | なし(近隣にコインパーキング) |
| オープン | 2024年1月16日 |
行く前に知っておきたいこと
- ディナーは17:30と19:30の2部制。ランチのある日はディナーが19:30の回だけになります
- ランチは土曜と隔週水曜のみで13,200円(税込)。ディナーより手が届きやすい価格です
- コース27,500円にサービス料10%が加算されます。飲みものは別途です
- 香水は使わないでほしいとお店が案内しています。鮨屋なので、香りの強いものは控えていくのが無難です
- 店内はエントランスも含めてすべて禁煙。店舗の周辺での喫煙も控えるよう案内があります
- ドリンクの持ち込みができます(1本につき5,000円)。好きなお酒を合わせたい方は相談してみてください
- 電話予約は営業日の12:00〜17:00。24時間受け付けているWeb予約のほうが確実です
- カウンター8席のみで個室はありません。日曜・月曜が定休です
鮨 こん藤 まとめ
京都で日本料理を学んだ近藤氏らしく、つまみには季節の移ろいが丁寧に組み込まれていました。
うすい豆や山菜、筍、初鰹から始まり、握りでは桜鱒、蛍烏賊へ。春の食材を使うだけでなく、ほろ苦さや香り、食感の違いによって季節を表現しているのが印象的です。
握りでは、三宅島の釣り鮪を赤身、中トロ、大トロと続けて味わえたのも面白いところ。
同じ個体でも、部位によって歯応えや酸味、脂の余韻が大きく変わります。
初鰹の塩気や、馬糞雲丹とシャリの粒感など、少し気になる部分もありましたが、率直な印象を含めて個性の分かりやすいコースでした。
鮨だけではなく、日本料理としてのつまみや八寸、季節感のある甘味まで楽しみたい人に合う一軒。
訪れる季節によって、また違う構成を味わってみたくなります。