鴨ゆき|玉鋼で焼く「銀の鴨」を味わう鴨料理専門店@東京・新富町

2026年5月、新富町にオープンした鴨料理専門店「鴨ゆき」へ。
店主を務めるのは、フランス料理の世界で20年以上経験を積んだ北島卓斗シェフ。青森県産のブランド鴨「銀の鴨」に惚れ込み、その魅力をさまざまな調理法で引き出すおまかせコースを提供しています。

鴨ゆきの外観。石とテクスチャーのある壁に、小さな銅色の看板が掛かった控えめな入り口
看板は小さく、知らなければ通り過ぎてしまいそうな構えです
目次

玉鋼で焼く「銀の鴨」を味わう、新富町の鴨料理専門店「鴨ゆき」

店内は7席のカウンターのみで、完全予約制。
目の前で鴨を一枚ずつ焼き上げる様子を眺めながら、出来立てを味わえる造りです。

鴨ゆきの店内。グレーの石壁と木の天井、白木のカウンター。壁には鴨の絵が飾られている
カウンター7席のみ。壁には鴨の絵が一枚

このお店を象徴するのが、日本刀の原料としても知られる希少な「玉鋼(たまはがね)」で作られた鉄板。
高い蓄熱性を活かして表面を香ばしく焼きつつ、中の水分を保ったまましっとりと火を入れられるそうです。

玉鋼はたたら製鉄でしか作れない鋼で、鉄の密度が高く不純物が少ないのが特徴。
その鉄板で焼く鴨を、お店では「お狩場焼き」と呼んでいます。

杉の葉を敷いた皿に横たえられた、一羽まるごとの銀の鴨
コースの最初に、銀の鴨を見せてくれます

コースの主役となる銀の鴨は、信頼する青森県の生産者に特別に育ててもらっているもの。
一般的な鴨よりも大きく、約4.5kgまで育てられた一羽が最初に披露されます。

「銀の鴨」は、青森県三戸郡新郷村で育てられているフランス生まれのバルバリー種。
採卵から孵化、飼育、処理までを一貫して自社で行い、鴨にとって過ごしやすい環境を整えることを掲げている生産者です。

鴨料理だけを続けるのではなく、前後に季節の魚介や野菜を織り交ぜたコース構成も鴨ゆきの特徴。
和食の流れを基本にしながら、ソースや火入れにはフレンチで培った技術が感じられます。

おまかせコース

朱塗りの膳にのせられた、鴨ゆきのお献立の品書きと黒い箸
お献立には、渡り蟹からはじまり甘味まで11の品が並びます

コースはおまかせ23,000円(税込)の一本。別途サービス料10%となります。
ひとつの食材を12通りの調理法で味わう構成で、お献立には渡り蟹からはじまり、コンソメ、時知らず、金目鯛、潤菜、玉鋼、藁焼き、さくらんぼトマト、玉蜀黍、麺、甘味と並んでいました。

わたり蟹 紹興酒漬け

青と黄の絵付けの器に盛られた、わたり蟹の紹興酒漬け。蟹の爪と内子がのっている
青と黄の絵付けの器で。爪までそのままに

最初は、北海道産のわたり蟹から。
酒に漬けた蟹は、身の甘みがしっかりと感じられ、蟹味噌と卵の濃厚なコクが重なります。
そこへ紹興酒の芳醇な香りが加わり、前菜から余韻のある味わい。

鴨コンソメ

黒い器に注がれた、澄んだ金色の鴨のコンソメ。木の蓋には小さな鴨の置物がのっている
シンプルだからこそ違いが出るコンソメ

完成までに3日をかけるという、鴨のコンソメスープ。
澄んだ見た目からは想像できないほど、鴨の旨味が濃く抽出されています。
コク深いのに重たさはなく、口当たりはあくまで繊細でやさしい。

飲み進めるほどに旨味の層が感じられ、長い余韻が残ります。
手間を惜しまず丁寧に仕上げられていることが伝わる一杯でした。

時知らずの手巻き寿司

海苔の上にシャリと燻製にした時知らずをのせ、木の芽を添えた手巻き寿司
海苔とシャリの上に、燻製にした時知らずを

脂の乗った時知らずを燻製にし、鱒卵とともに海苔で巻いていただきます。
一般的な鮭の旬は秋ですが、時知らずは春から初夏にかけて獲れる産卵前の若い鮭。
身にはしっかりと脂が乗り、口の中でやわらかくほどけていきます。

燻製の香りと鱒卵のコク、海苔の香りが重なり、印象に残りました。

金目鯛 ヴァンブランソース

青磁の皿にのった金目鯛の切り身2切れと、白いヴァンブランソース
青磁の皿に、金目鯛とヴァンブランソース

金目鯛には、白ワインをベースにしたヴァンブランソースを合わせて。
フレンチでは白ワインの酸味を効かせるソースですが、こちらでは白味噌と蛤出汁を加え、和のコースになじむ味わいに仕上げています。

金目鯛の豊かな脂を白ワインの酸が引き締め、白味噌のまろやかなコクと蛤出汁の旨味が包み込みます。
北島シェフのフレンチの経験が伝わってくる一皿でした。

鴨つくね

淡い色の鉢に、出汁を張って盛られた丸い鴨つくね
大和芋を加えて、ふっくらと仕上げた鴨つくね

鴨の挽肉を使ったつくね。
火を入れると締まりやすい鴨肉に大和芋を加えることで、ふっくらとやわらかな食感に仕上げています。

口当たりは軽やかですが、噛むと鴨の旨味がきちんと広がります。
鴨肉の力強さとは異なる、やさしい表情を楽しめました。

鴨ロースのしゃぶしゃぶ 蓴菜と黄韮

白い菊形の器に、出汁にくぐらせた鴨ロースと蓴菜、黄韮を盛った一皿
出汁にさっとくぐらせた鴨ロースに、蓴菜と黄韮

薄く切った鴨ロースをさっと出汁にくぐらせ、蓴菜と黄韮を添えたしゃぶしゃぶ。
鴨ロースはしっとりとやわらかく、脂の甘みも穏やか。蓴菜のつるりとした口当たりと、黄韮のやさしい香りが重なります。
出汁を含めて全体は繊細ですが、鴨の旨味があるため物足りなさはありません。

玉鋼で焼き上げる「銀の鴨」

カウンター越しに、丸い玉鋼の鉄板で鴨を焼く北島シェフ
目の前の玉鋼の鉄板で、一枚ずつ焼き上げていきます

ここからは、最初に見せていただいた銀の鴨を、玉鋼の鉄板で一枚ずつ焼き上げていきます。

朱塗りの膳に並んだ大根おろし、ガリ、生のブラックペッパー
大根おろし、ガリ、生のブラックペッパー。これらを好みで

大根おろし、醤油、生のブラックペッパー、ガリが用意され、部位によって山葵や赤ワインソースを合わせながらいただきました。

ロース

大根おろしの上にのせられた、表面が香ばしく焼けた鴨ロースの一枚
表面は香ばしく、中は淡い赤みを残して

ロースには鴨脂を塗りながら火を入れているそう。
表面は香ばしく、中はしっとり。赤身の濃い旨味に、鴨脂の甘さとコクが加わり、飲み込んだあとまで余韻が長く続きます。
一枚目からしっかりとしたインパクトがあり、玉鋼焼きの魅力をわかりやすく感じられる部位でした。

ささみ 山葵

大根おろしの上にのせた鴨のささみに、山葵をひとつまみのせた一皿
鴨のささみには山葵を

続いては、鴨のささみを山葵とともに。
地鶏のささみとも異なる、ふわっとやわらかな食感が印象的です。

淡白に傾きやすい部位ですが、こちらも鴨脂をまとわせることで、旨味としっとり感が補われています。
山葵の清涼感が加わると後味が軽くなり、鴨の繊細な風味がより伝わってきました。

ぼんじり

大根おろしの上にのせられた、脂の多い鴨のぼんじり
ひと口の中に脂の甘みが詰まったぼんじり

脂の多いぼんじりは、ほかの部位よりもコクのある味わい。
玉鋼で香ばしく焼かれた表面と、噛んだ瞬間に広がる脂の甘みを楽しめます。
ロースやささみとの違いがはっきりしていて、同じ一羽の中でも部位ごとに表情が変わる面白さがありました。

赤ワインソース

青磁の皿にのせた鴨肉に、艶のある赤ワインソースをかけた一皿
同じ鴨でも、赤ワインソースを合わせるとフレンチの顔になります

大根おろしと醤油で和風に味わったあとは、赤ワインソースを合わせた一皿。
艶のあるソースをまとうと、同じ鴨がフレンチの一皿の表情に変わります。
和の薬味で軽やかに食べる流れの途中にこれが入ることで、コースにメリハリが生まれていました。

ピーナッツもやし、2年熟成メークイン

大根おろしの上にのせられた、焼いたピーナッツもやし。豆の部分がついている
豆がついたままのピーナッツもやし

焼き野菜には、ピーナッツもやしと2年熟成のメークイン。
ピーナッツもやしのしゃきっとした食感が、鴨肉の合間のよいアクセントになります。

ピーナッツもやしは、生の落花生を発芽させたもの。
普通のもやしより軸が太く、先についた豆の部分から落花生そのものの甘みが出てきます。流通量が少なく、あまり見かけない野菜です。

大根おろしの上にのせられた、こんがりと焼かれた2年熟成メークインの一切れ
2年寝かせたメークイン。角が立つほどしっかり焼かれています

メークインは長く熟成させることで糖度を高めているそう。
ほくっとした食感の中に驚くほど強い甘みがあり、シンプルに焼くことで素材の個性が際立っていました。

藁で燻す「鴨肉の藁焼き」

網にのせた鴨肉に、束ねた藁で火をあてる北島シェフ
束ねた藁で、一気に香りをまとわせます

鴨肉を藁で燻し、香ばしい香りをまとわせた一品。

木のまな板にのせられた、藁焼きを終えた鴨のかたまり肉
焼き上がったところを、まな板ごと見せてくれます
黒いまな板の上で、藁焼きにした鴨肉を切り分ける北島シェフ
カウンター越しに切り分けていきます
大根おろしの上にのせられた、断面が濃い赤色をした鴨の藁焼き
断面はこの色。藁の香りをまとっています

弾力のある肉質で、噛むほどに赤身の旨味があふれてきます。
玉鋼で焼いた鴨とはまた異なり、藁の香りが鴨の力強い風味をさらに引き立てていました。

骨付きもも、ももフィレ

木のまな板にのせられた、こんがりと焼き上がった鴨の骨付きもも肉
骨付きのもも肉。皮目までしっかり焼かれています

骨付きのもも肉は、しっかりとした弾力が印象的。
骨の近くならではの濃い旨味があり、噛みしめるほど味わいが増していきます。

大根おろしの上にのせられた、藁焼きにした鴨のもも肉
もも肉も藁焼きで
大根おろしの上にのせられた鴨のももフィレに、山葵を添えた一皿
ももフィレには山葵を添えて

ももフィレも藁焼きで。豊かな香りと赤身の旨味が重なり、鴨のさまざまな部位と火入れを楽しんだ焼き物の締めにふさわしい一品でした。

口直しと食事、甘味

さくらんぼトマト

切子のガラス器に入った、湯むきしてコンポートにしたさくらんぼトマト
切子の器に、湯むきしたさくらんぼトマト

焼き物のあとは、湯むきしてコンポートにしたさくらんぼトマト。
口に入れると、トマトとは思えないほどの甘さに驚きます。
みずみずしさとほどよい酸味もあり、鴨の脂をすっきりと切り替えてくれる口直しでした。

とうもろこしご飯

緑釉の土鍋いっぱいに広がる、炊き上がったとうもろこしご飯
土鍋の蓋を開けたところ。一面のとうもろこし

食事は、鴨脂を使ったバター醤油仕立てのとうもろこしご飯。

網目模様の茶碗によそったとうもろこしご飯と、香の物、黒い漆の器
よそっていただくと、この量。香の物と一緒に

とうもろこしの甘みに、鴨脂とバターの濃厚なコクが重なります。
香ばしい醤油の風味も加わり、締めのご飯とは思えないほど存在感のある味わいです。

鴨コンソメのラーメン

黒い漆の椀に盛られた、澄んだスープの鴨コンソメラーメン。刻んだ白葱がのっている
締めにもう一品、鴨コンソメのラーメン

ご飯に続いて、鴨コンソメを使ったラーメンも登場します。
鴨そばを思わせる少し甘めのスープには、鴨出汁の旨味が凝縮。
山椒の香りが全体を引き締め、コースの終盤でもするすると食べられます。

最初にいただいた澄んだコンソメとはまた違い、麺と合わせることで鴨のコクをより力強く感じられました。
最後の一滴まで飲み干したくなる味わいです。

笛吹産シャインマスカット大福

カウンターに置かれた、山梨県産シャインマスカット「匠一房」の紺色の化粧箱
使っていたのは、JAふえふきの「匠一房」

甘味は、山梨県笛吹産のシャインマスカットを使った大福。
箱を見せていただくと、JAふえふきの「匠一房」という銘柄でした。

青磁の皿にのった、シャインマスカットを一粒まるごと包んだ大福
一粒をまるごと包んだ大福

みずみずしい果実の甘みが広がり、ボリュームのあるコースを爽やかに締めくくります。

合わせたワイン

カウンターに置かれたジュヴレ・シャンベルタン2020のボトルと、赤ワインの入ったグラス
鴨に合わせて、ブルゴーニュの赤を1本

鴨に合わせたのは、ブルゴーニュの「S.C.ギヤール ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエイユ・ヴィーニュ ラ・プラティエール 2020」。
ジュヴレ・シャンベルタン村にある小さな造り手で、いまはミシェル・ギヤール氏と妹のオデット氏が引き継いでいます。
ヴィエイユ・ヴィーニュは古樹から造られるもので、ピノ・ノワールらしい赤い果実の香りと、細やかなタンニンが特徴です。

赤身の旨味がはっきりした鴨には、ボルドーのような強い赤よりも、こうしたブルゴーニュのほうが寄り添ってくれます。

この日合わせたワイン

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  1. 1 S.C.ギヤール ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエイユ・ヴィーニュ ラ・プラティエール 2020 S.C.ギヤール ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエイユ・ヴィーニュ ラ・プラティエール 2020 フランス・ブルゴーニュ/赤 ピノ・ノワール。ジュヴレ・シャンベルタン村の小さな造り手の古樹から 楽天市場で探す

お店情報

店名 新富町 鴨ゆき
ジャンル 鴨料理、日本料理
住所 東京都中央区新富1-15-13 AXAS銀座アジールコート 1F
アクセス 東京メトロ有楽町線「新富町」駅から徒歩5分/東京メトロ日比谷線・JR京葉線「八丁堀」駅から徒歩4分
電話 03-5244-9007
営業時間 18:00〜20:00/20:30〜22:30(完全2部制)
定休日 日曜・祝日
席数 カウンター7席
予算の目安 おまかせコース23,000円+サービス料10%(飲みもの別)
予約 完全予約制(TableCheck。当日予約は電話)
支払い カード可(VISA・Master・JCB・AMEX・Diners・UnionPay)、電子マネー可(交通系・楽天Edy・iD・QUICPay)、QRコード決済可(PayPay・d払い・楽天ペイ・au PAY ほか)
駐車場 なし
オープン 2026年5月11日

行く前に知っておきたいこと

  • 完全予約制で、予約はTableCheckから。カウンター7席だけなので、日にちが決まったら早めに押さえるのが確実です
  • 18:00と20:30の完全2部制。前半・後半のどちらになるかで、そのあとの予定の組み方が変わります
  • 12歳以下のお子さまは入店できません。静かに食事を楽しむお店です
  • コースはおまかせ1本で23,000円、これにサービス料10%。飲みものは別途です
  • 鴨だけが続くコースではありません。わたり蟹や時知らず、金目鯛など、季節の魚介が合間に入ります
  • 日曜・祝日が定休。新富町駅から徒歩5分、八丁堀駅から徒歩4分で、駐車場はありません
  • カウンターは調理の様子がよく見えます。玉鋼の鉄板で焼く手元も、藁焼きの炎も目の前です

鴨ゆき まとめ

コンソメ、つくね、しゃぶしゃぶ、玉鋼焼き、藁焼き、そしてラーメンまで。
一羽の銀の鴨を部位や調理法を変えながら味わうことで、鴨肉の奥深さを改めて感じられるコースでした。

中でも印象に残ったのは、玉鋼で一枚ずつ焼き上げるロースとささみ。
表面の香ばしさと中のしっとり感、赤身の濃い旨味と鴨脂の甘みがはっきりと感じられます。
欲を言えばもっと鴨肉をいただけたら嬉しい。

鴨を主役にしながらも、わたり蟹や時知らず、金目鯛、季節の野菜を間に挟むことで、コースが単調にならないのもよいところ。
白味噌と蛤出汁を加えたヴァンブランソースや赤ワインソースなど、和食の中にフレンチの要素が自然に溶け込んでいました。

これまで食べてきた鴨料理とは少し異なる切り口で、銀の鴨のさまざまな表情に出会える一軒。
玉鋼という特別な鉄板だけではなく、それぞれの部位に合わせた火入れや、コース全体の組み立ても印象に残りました。

 

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この記事を書いた人

センスのいい店と、美味しい時間。東京を中心に、静岡・関西まで1,000軒以上を訪ね歩いています。掲載しているお店は、すべて自分が訪問し、撮影したものです。おいしかったものは、おいしかったと。好みと違ったものは、そう書きます。

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