てんぷら 下村|山の上で磨いた技が光る、軽やかな天ぷら@東京・新御徒町

新御徒町駅から歩いて5分ほど。台東区三筋の静かな路地に佇む天ぷら専門店「てんぷら 下村」を訪れました。
店主の下村満彦氏は、御茶ノ水の名店「てんぷらと和食 山の上」で約20年にわたり研鑽を積み、副料理長も務めた職人です。
食材ごとに揚げる温度や時間を変え、薄い衣の内側に香りや水分を残す天ぷらが印象的でした。

目次

新御徒町の路地に佇む「てんぷら 下村」

白木のカウンターに用意された天つゆ、大根おろし、塩、天ぷらを受ける金網の器
席には天つゆ、大根おろし、塩。中央の金網に揚げたてが置かれます

お店があるのは、つくばエクスプレス・都営大江戸線の新御徒町駅A4出口から徒歩5分ほどの場所。
蔵前や浅草橋からも歩ける、下町の落ち着いた一角です。

暖簾をくぐると、店内にはすっと伸びる白木のカウンター。
天ぷら鍋に向き合う店主の所作を間近に眺めながら、揚げたてを一品ずつ味わえます。席には天つゆ、大根おろし、塩が用意されていました。

食べログの「天ぷら 百名店」に2022年・2023年・2025年と選ばれている一軒ですが、店内には張り詰めすぎない穏やかな空気が流れています。
この日は小さな赤ちゃん連れのご家族もいて、カウンターの緊張感というより、近所の名店に通うような気安さがありました。

木の札に手書きされたこの日の魚介の品書き。車海老、キス、めごち、穴子、生うに、甘鯛、スミイカ、白魚、カキ、ふぐ白子
この日の魚介。木札の裏には野菜が書かれています

カウンターの背後には、その日の食材を手書きした木の札。
表が魚介で、車海老、キス、めごち、穴子、生うに、甘鯛、スミイカ、白魚、カキ、ふぐ白子。

「やさいはうら面です」と書かれているとおり、裏返すと伏見とうがらし、小玉ねぎ、アスパラ、しいたけ、ハス、まいたけ、水茄子、タラの芽、ふきのとう、そら豆、筍、こごみと続きます。売り切れた品には線が引かれ、その日の残りがひと目で分かるようになっていました。

木の札の裏面に書かれた野菜の品書き。伏見とうがらし、アスパラ、まいたけ、水茄子、タラの芽、ふきのとう、そら豆、筍、こごみ、さつま芋(40分)
裏面の野菜。左端に「さつま芋(40分)」の文字

野菜の札の左端には、四角で囲まれた「さつま芋(40分)」の一行。
隣の札にも「全てのコースに、さつま芋は含まれていません。
お時間がかかりますので最初にご注文をお願いします」と日本語と英語で書かれていて、名物の存在は席についた瞬間から伝わってきます。

てんぷら 下村のおまかせコース

この日のおまかせコースは14,300円(税込)。
活車海老2本、魚4品、野菜5品、海老のかき揚げに、ご飯、赤出汁、香の物、アイスクリームが付く構成です。
名物のさつまいもはコースに含まれていないため、席についてすぐ、別途お願いしました。

衣は全体を通して薄く、油切れも軽やか。
ただ軽いだけではなく、魚介の水分や野菜の香りを内側に留め、食材の輪郭をはっきりと感じられる仕上がりです。
山菜のほろ苦さ、魚介の甘み、根菜の力強い食感と、ひと品ごとに印象が変わるため、十数品を重ねても最後まで単調になりません。

車海老の頭

金網の上に置かれた、脚まで香ばしく揚がった車海老の頭2つ
まずは車海老の頭から。脚の先までカリカリに

最初は、車海老の頭から。脚の先までカリカリに揚がり、噛むたびに殻の香ばしさと海老味噌の濃い旨味が広がります。
余分な油を感じにくく、ひと口目から衣の軽さがよく伝わりました。
まずはそのまま、続いて塩を少し添えると、車海老の甘みがさらに際立ちます。

車海老 2本

薄い衣をまとい、尾まで赤く色づいた車海老の天ぷら1本目
1本目は中心に水分を残した瑞々しい食感

身は2本続けていただきます。1本目は中心に水分を残した瑞々しい食感で、噛んだ瞬間に車海老らしい甘みがふわり。
もう1本は弾力と香ばしさが少し強く、甘みの余韻もより濃く感じられました。
同じ車海老でも、わずかな火入れの違いで食感と旨味の表情が変わります。頭・1本目・2本目と、1尾を3度に分けて味わう流れです。

1本目より色づきの強い、車海老の天ぷら2本目
2本目は弾力と香ばしさが少し強く

たらの芽

薄い衣をまとい、鮮やかな緑色が透けて見えるたらの芽の天ぷら
春の山菜から、まずはたらの芽

春の山菜から、まずはたらの芽。衣は芽の凹凸に薄くまとい、表面は軽く、中はほっくりとした食感です。
青々しい香りと穏やかな苦みが口に広がり、春らしさを素直に味わえました。
緑がうっすら透けて見えるほど衣が薄いのも、この店らしいところです。

熊本県産 水茄子

大ぶりに切られ、濃い紫色の皮ごと揚げられた水茄子の天ぷら
大ぶりに切った熊本県産の水茄子

大ぶりに切った熊本県産の水茄子。薄い衣の中には水分がたっぷりと残り、噛むと熱々の果汁があふれます。
皮は薄く、身にはやわらかな甘みがありながら、後味はもたれません。
油と相性の良い茄子ですが、重たさを感じさせない仕上がりでした。

尾を付けたまま大きく開いて揚げられた鱚の天ぷら
大きく開いた鱚。衣の歯切れと身の繊細さの対比が印象的

大きく開いた鱚は、衣の歯切れと身の繊細さの対比が印象的。
口に運ぶと、白身がふわりとほどけ、上品な甘みが広がります。
身は程よく脱水され、鱚そのものの風味をまっすぐに楽しめる一品でした。

こごみ

くるりと巻いた先端が見える、こごみの天ぷら
くるりと巻いた姿も美しい、春のこごみ

くるりと巻いた姿も美しい、春のこごみ。先端には軽い歯触りがあり、茎は瑞々しくやわらか。
山菜らしい青い香りはありますが、苦みは穏やかです。たらの芽や蕗の薹とは異なる、やさしい春の風味が感じられました。

牡蠣

ふっくらとした身をごく薄い衣で包んで揚げた牡蠣の天ぷら
ごく薄い衣で旨味を閉じ込めて

ふっくらとした牡蠣は、ごく薄い衣で旨味を閉じ込めて。
外側は香ばしく、中はジューシー。噛むと熱いエキスと磯の香りが広がり、牡蠣の濃厚さを存分に楽しめます。
衣が主張しすぎないため、後味には牡蠣のミルキーなコクが長く残りました。

蕗の薹

丸みのある形のまま、うっすら緑が透ける衣で揚げられた蕗の薹
丸みのある蕗の薹。春ならではのほろ苦さが主役

丸みのある蕗の薹は、春ならではのほろ苦さが主役。揚げることで尖った苦みがほどよく和らぎ、奥から清々しい香りが立ち上がります。
小さなひと品ですが味わいには力があり、コースの中で心地よいアクセントになっていました。

白魚の大葉巻き

大葉でひとつにまとめて揚げた白魚の天ぷら。白い身と緑の葉が重なっている
崩れやすい白魚を、大葉でひとつにまとめて

白魚を大葉でまとめて揚げた一品。白魚の繊細な身はしっとりとしており、ほのかな甘みと塩気を感じます。
そこへ大葉の爽やかな香りが重なり、後味は軽やか。
崩れやすい白魚をひとつにまとめながら、内側の水分を保った仕上がりにも技術を感じました。

蓮根

厚く輪切りにした蓮根の天ぷらと、切り分けられたひと切れ
厚く切った蓮根。断面の穴まで香ばしく

厚く切った蓮根は、表面の香ばしさと力強い歯応えが魅力です。
さくっと歯が入り、そのあとに蓮根らしい粘りと瑞々しさが続きます。
噛むほどに自然な甘みが増し、塩でいただくと輪郭がより鮮明になりました。

穴子

長い姿のまま揚げて2つに分けられた穴子の天ぷら。白い身がほどけている
長い姿のまま揚げて、食べやすい大きさに

長い姿のまま揚げられた穴子は、食べやすい大きさに分けて提供されます。衣はさくっと香ばしく、身はふっくら。
口の中でほどけるようなやわらかさと、穴子の穏やかな甘みが楽しめました。
最初は塩で軽やかに、途中から天つゆと大根おろしを合わせるのもよく合います。

さつまいも

厚切りのさつまいもの天ぷら。断面は鮮やかな黄色で、奥にブランデーの小瓶が見える
約40分かけて揚げる名物。添えられたブランデーと一緒に

さつまいもの天ぷらはコース外の追加料理で、仕上がりまで時間がかかるため最初に注文します。
この日は約40分かけて、厚みのあるさつまいもをじっくりと揚げていただきました。
表面には香ばしい焼き色がつき、中は鮮やかな黄色。
外側は薄い皮のように香ばしく、中はほくほく感となめらかな粘りを併せ持ち、時間をかけて引き出された甘みが濃厚です。

そのままでも十分に甘いですが、添えられたブランデーを少量かけると香りに奥行きが加わり、温かなデザートのような味わいに変わります。
下村を訪れるなら、あらかじめ追加しておきたい名物です。

天丼、しじみの赤出汁

天丼、しじみの赤出汁、香の物が並んだ食事のセット
食事は天丼、しじみの赤出汁、香の物で

食事は天丼、天茶、天バラから選べます。この日は天丼を。海老を中心としたかき揚げに、艶のある甘辛い丼つゆがなじんでいます。
衣の軽さは保ちながら、ご飯と合わせることで満足感のある締めに。
香ばしいかき揚げ、やや濃いめのつゆ、白いご飯が一体となり、天ぷらを単品で味わうときとは違う魅力が出てきます。

白いご飯の上に海老のかき揚げをのせ、甘辛い丼つゆをまとわせた天丼
海老を中心としたかき揚げに、艶のある丼つゆ

しじみの赤出汁は、味噌のコクとしじみの旨味がしっかり。天丼の甘みを受け止め、食後をすっきりとまとめてくれました。

アイスクリーム

白い花形の器に盛られた、淡いピンク色のアイスクリーム
締めは桜のアイスクリーム

最後は淡いピンク色の桜アイスクリーム。ひんやりとなめらかな口当たりで、温かな天ぷらを重ねたあとの余韻をやさしく整えます。
春の山菜から始まったコースを、季節感のある甘味で締めくくりました。

お店情報

店名 てんぷら 下村
ジャンル 天ぷら
住所 東京都台東区三筋1-11-13
アクセス つくばエクスプレス・都営大江戸線「新御徒町」駅A4出口から徒歩5分(約420m)
電話 03-5809-2866
営業時間 月・火・木・金・土 12:00〜13:30/17:00〜21:30(最終入店 ランチ13:30、ディナー19:30)
定休日 水曜・日曜・祝日
席数 14席(カウンター10席、テーブル4席)
今回のコース 14,300円(税込)※さつまいもは別途追加
予約 予約可(ネット予約はぐるなび・ポケットコンシェルジュのみ)
支払い カード可(VISA・Master・JCB・AMEX・Diners)/電子マネー・QRコード決済は不可
駐車場 なし(全席禁煙)
オープン 2017年9月30日

行く前に知っておきたいこと

  • 名物のさつまいもはコースに含まれません。揚がるまで約40分かかるため、席についたらまず注文を
  • 食事は天丼・天茶・天バラから選べます。海老のかき揚げ付きで、どれにするかは当日決められます
  • コースは複数あります。ランチ6,600円〜、ディナー16,500円などの設定があり、今回は14,300円のコースでした
  • 最終入店はランチ13:30、ディナー19:30。ゆっくり揚げてもらう店なので、時間には余裕をもって
  • ネット予約はポケットコンシェルジュとぐるなび限定。AIによる予約代行(オートリザーブ)は受け付けていません
  • 食材はその日の木札で分かります。魚介が表、野菜が裏。売り切れには線が引かれるので、気になる品は早めに
  • 水曜・日曜・祝日が定休。14席のみ、駐車場もないので予約と足の確保はお早めに

てんぷら 下村 まとめ

「てんぷら 下村」の魅力は、薄く軽やかな衣と、食材ごとに水分や香りを残す繊細な火入れにあります。
甘みを引き出した車海老、ふわりとほどける鱚と穴子、瑞々しい水茄子、香りや苦みの異なる春の山菜。
同じ揚げ物が続いても重さを感じにくく、ひと品ごとの違いを楽しみながら最後まで心地よく食べ進められました。

なかでも、40分かけて揚げるさつまいもは印象的。素材の持ち味をまっすぐに引き出す、下村らしい仕事が凝縮された一品です。
新御徒町や蔵前周辺で、落ち着いた空間で本格的な天ぷらを味わいたいときに訪れたい一軒でした。

 

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この記事を書いた人

センスのいい店と、美味しい時間。東京を中心に、静岡・関西まで1,000軒以上を訪ね歩いています。掲載しているお店は、すべて自分が訪問し、撮影したものです。おいしかったものは、おいしかったと。好みと違ったものは、そう書きます。

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