山﨑|王道の技に自由な感性を重ねる日本料理@東京・西麻布

西麻布交差点からほど近い日本料理店「山﨑」へ、2026年6月に再訪しました。
日本料理の技法を軸にしながら、発酵やハーブ、洋の要素を取り入れた自由な組み合わせが印象的なお店です。今回のコースも、鳥貝や毛蟹、金目鯛といった初夏の魚介から真鴨、土鍋ご飯へと続く充実した内容でした。

店主の山崎志朗氏は1987年、東京の生まれ。調理師学校「エコール 辻 東京」を首席で卒業したのち、紹介制の赤坂「もりかわ」で8年間修業しました。
2015年に独立して「霞町しろう」を営み、移転までの期間には広尾「CHIUnE」や京都「aca」の厨房へ「皿洗いをさせてください」と自ら願い出て学んだといいます。そして2018年8月23日、この西麻布の店を開きました。

開店からわずか3か月で『ミシュランガイド東京2019』の一つ星を獲得。
食べログでも The Tabelog Award の Silver を2020年から7年連続で受賞し、「日本料理 TOKYO 百名店」にも繰り返し選ばれている一軒です。

藁や炭火による香ばしさ、こぶみかんやミントの爽やかな香りを重ね、季節の食材を一段深く味わわせてくれます。
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目次

カウンター10席の落ち着いた空間

白木のカウンター越しに見える厨房と、カウンターに置かれた一升瓶
白木のカウンター越しに、料理が仕上がっていく様子が見えます

店内はカウンター10席のみ。料理が仕上がる様子を眺められる距離感でありながら、静かすぎて緊張するような空気はなく、落ち着いて食事を楽しめます。
一皿ごとの量はしっかりとしていますが、温度や味の濃さに変化があり、コースは心地よいテンポで進んでいきます。

2026年6月のおまかせコース

訪問時のおまかせコースは44,000円(税込・サ別)〜。
伝統的な日本料理をベースにしつつ、香りや食感の組み合わせに山﨑らしい感性が表れたコースでした。

石川県産 炙り鳥貝

青い染付の器に盛られた、石川県産の炙り鳥貝と紫の花穂紫蘇
コースの始まりは、石川県産の炙り鳥貝から

最初は、石川県産の鳥貝をさっと炙って。表面から立ち上がる香ばしさが鳥貝の甘みを引き立て、噛むほどに磯の風味が広がります。
ふっくらと肉厚で、弾力がありながら歯切れは軽やか。炙りを入れることで香りは強くなっていますが、繊細な風味やみずみずしさはきれいに残されていました。コースの始まりから、素材の良さをまっすぐに感じられる一品です。

鱚の天ぷら、塩漬けのこのこ、飯蒸し

飯蒸しの上に鱚の天ぷらを重ね、青い海苔をあしらった一皿
飯蒸しに鱚の天ぷらを重ねて

続いて、もち米を蒸した飯蒸しに鱚の天ぷらを重ね、塩漬けのこのこを添えた一皿。鱚の衣は軽く、表面はさっくり。中の身はふわっとやわらかく、淡泊な中に上品な旨味があります。
もちもちとした飯蒸しからは米の甘みが感じられ、塩漬けのこのこの凝縮した旨味と塩気が全体のアクセントに。揚げ物と飯蒸しを合わせた満足感のある料理ですが、鱚の繊細さと豊かな海苔の香りによって重たくなりすぎません。

毛蟹の真丈と蓴菜のお椀

黒い椀に澄んだ出汁、毛蟹をのせた真丈と蓴菜
毛蟹の真丈に、蓴菜を敷いたお椀

毛蟹の真丈に、蓴菜を添えたお椀。澄んだ出汁は角のないやさしい味わいながら、余韻にはしっかりとした深みがあります。
真丈には毛蟹の繊細な甘みと旨味が詰まり、口に含むとふんわりとほどけるよう。上に散らした青い柑橘の皮が、香りを一段引き上げます。

じゅんさいのつるりとした喉越しが涼やかで、やわらかな真丈との食感の対比も楽しめます。
出汁、毛蟹、じゅんさいの持ち味が静かに重なる、端正なお椀でした。

金目鯛の麹漬け 藁焼き

白い皿に、鱗を立てて焼いた金目鯛とカリフラワーのすり流し、緑色のソース
鱗まで香ばしく焼いた金目鯛に、カリフラワーのすり流しとこぶみかんのソース

麹に漬けた金目鯛を藁で香ばしく焼き上げ、煮詰めたカリフラワーのすり流しと、こぶみかんの葉を使ったソースを合わせて。金目鯛は表面が香ばしく、中はしっとり。脂の甘みに麹のまろやかな塩気がなじみ、藁の香りが長い余韻をつくります。
カリフラワーのすり流しは、煮詰めることで甘みとコクが凝縮され、金目鯛の脂をやさしく受け止める存在。そこへ、こぶみかんの葉の柑橘を思わせる香りが加わり、後味を軽やかに整えます。

スナップエンドウ、アスパラガス、真河豚白子の茶碗蒸し

角の器に、緑の豆とアスパラガスを散らした出汁餡がかかった茶碗蒸し
餡の下に、真河豚の白子を使った茶碗蒸しが隠れています

真河豚の白子を使った茶碗蒸しに、スナップエンドウとアスパラガスを添え、貝柱の出汁餡をかけて。なめらかな茶碗蒸しの中に、白子の濃厚でクリーミーなコクが溶け込んでいます。
貝柱の出汁餡は海の旨味がしっかりと感じられますが、味わいは繊細。スナップエンドウのみずみずしい甘みと、アスパラガスの青々とした香りが、白子の濃さに爽やかな変化を添えます。

太刀魚と賀茂茄子

くるりと巻いて焼いた太刀魚と、こんがり焼いた賀茂茄子
厚みが出るように巻いた太刀魚と、賀茂茄子

脂ののった太刀魚に賀茂茄子を合わせた一品。太刀魚はくるりと巻いて厚みを出してあり、表面は香ばしく、中の身はふっくらとしてやわらか。上品な白身でありながら、噛むと脂の甘みが広がります。
賀茂茄子は緻密な果肉に旨味をたっぷりと含み、口の中でとろりとほどける仕上がり。太刀魚の脂と茄子のなめらかな質感がよくなじみ、素材数を絞った組み合わせだからこそ、それぞれの持ち味が際立っていました。

真鴨の炭火焼き

染付の皿に、中心を赤く残して焼いた真鴨と黒いソース
中心に赤色を残した火入れ。骨醤油と黒にんにくのソースで

肉料理は、真鴨の炭火焼き。表面には炭火の香ばしさがあり、中心は美しい赤色を残した火入れです。
身はしなやかで弾力があり、噛み進めるほど赤身の濃い旨味と鉄分を思わせる風味が広がります。

合わせるのは、鴨の骨から作る骨醤油と黒にんにく。骨醤油が鴨の旨味をさらに深くし、黒にんにくの熟成した甘みと穏やかな酸味が余韻に厚みを加えます。
なめこのやわらかなとろみがソースと鴨肉をつなぎ、鴨の脂で焼いた蓮根には、シャキッとした食感と豊かなコクがありました。鴨そのものの力強さはありながら、後味は重すぎません。

鮎魚女、新玉ねぎの土鍋ご飯

土鍋いっぱいに、揚げた鮎魚女と新玉ねぎ、赤紫蘇の芽を散らした炊き込みご飯
土鍋のまま、まず見せてくれます

食事は、鮎魚女(あいなめ)と新玉ねぎの土鍋ご飯。炊き上がった土鍋をそのまま見せてくれるのですが、揚げた鮎魚女に新玉ねぎ、赤紫蘇の芽が散らされた眺めが華やかです。
鮎魚女は香ばしく揚げられ、衣の軽い歯触りのあとに、ふっくらとした身の旨味が続きます。新玉ねぎのやさしい甘みが、魚の風味を引き立てる組み合わせ。

よそった土鍋ご飯の上に、半日漬けた濃い橙色の卵黄をのせたところ
途中から、半日ほど漬けた卵黄を

途中から半日ほど漬けた卵を合わせて。ねっとりと濃厚な卵黄が艶のあるご飯に絡み、まろやかなコクが加わります。
そのままでも十分に美味しく、卵を加えるとまた異なる表情を楽しめる、満足感の高い締めでした。

白甘鯛のお茶漬け

黒い椀に、焼いた白甘鯛と海苔をのせたお茶漬け
土鍋ご飯のあとは、白甘鯛のお茶漬けで

土鍋ご飯のあとは、白甘鯛のお茶漬け。温かな汁を注ぐと白甘鯛の香ばしさが立ち、上品な脂と旨味がご飯へゆっくりとなじんでいきます。
身はやわらかくほどけ、さらりと食べられますが、白甘鯛ならではの甘みがしっかりと残ります。

牛乳とミントのアイスクリーム

白いアイスクリームに、バニラビーンズの粒が見える赤いソースをかけたデザート
ブラッドオレンジとマダガスカル産バニラのソースをかけて

甘味は、牛乳とミントのアイスクリーム。牛乳のまろやかなコクを感じたあと、ミントの清涼感がすっと抜けていきます。
合わせるのは、ブラッドオレンジとマダガスカル産バニラのソース。ブラッドオレンジの甘酸っぱさとほのかな苦みが全体を引き締め、バニラの甘い香りがアイスクリームに奥行きを添えます。

メレンゲの軽くサクサクとした食感も心地よいアクセント。
濃厚さと爽やかさをあわせ持ち、食後にふさわしい軽やかなデザートでした。

途中からは、八王子のクラフトジン「トーキョーハチオウジン エルダーフラワー」をアイスクリームにかけて味変。
エルダーフラワーと甘夏ピールを使ったジンなので、ミントの清涼感に華やかな柑橘の香りが重なります。

ダージリン茶

朱色の茶托にのせた白い器のダージリン茶
最後は香りの良いダージリン茶で

最後は、香りの良いダージリン茶を。ほどよい渋みのあとに、やわらかな甘みと華やかな香りが残ります。
ミントや柑橘を使ったデザートの余韻ともよく合い、長いコースを静かに締めくくってくれました。

合わせたお酒

山﨑は日本酒もワインも揃うお店。この日いただいたのは日本酒が1本と、デザートにかけていただいたクラフトジンです。

カウンターに置かれた、トーキョーハチオウジン エルダーフラワーの八角形ラベルのボトル
八王子で造られるクラフトジン「トーキョーハチオウジン」

日本酒の「寺尾(TERAO)」は、佐賀県鹿島市の矢野酒造が醸す純米大吟醸。佐賀県産の山田錦を100%使い、精米歩合は44%、アルコール分は16%です。
「価値を共有できる、限られたレストランへ」という方針で、限られた飲食店にしか卸されていません。矢野酒造は寛政8年(1796年)創業の蔵で、代表銘柄は「肥前蔵心」です。

アイスクリームにかけてくれた「トーキョーハチオウジン エルダーフラワー」は、八王子市にある東京八王子蒸溜所のクラフトジン。多摩地区で初のクラフトスピリッツ蒸溜所として2022年1月に立ち上がりました。
ジュニパーベリーやレモンピールに加えて甘夏ピールとエルダーフラワーを含む10種のボタニカルを使い、アルコール分は40%。八角形のラベルは、八王子の「八」から着想したものだそうです。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022のジャパニーズジン部門では銀賞を受けています。

この日いただいた2本

銘柄が手に入らないこともありますが、造り手の目星をつける手がかりにどうぞ。

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  1. 1 寺尾(TERAO)純米大吟醸 寺尾(TERAO)純米大吟醸 佐賀・鹿島/矢野酒造 佐賀県産山田錦100%、精米歩合44%。限られた飲食店にだけ卸される銘柄で、通販では見つかりませんでした
  2. 2 トーキョーハチオウジン エルダーフラワー トーキョーハチオウジン エルダーフラワー 東京・八王子/クラフトジン(40度) 東京八王子蒸溜所。甘夏ピールとエルダーフラワーを含む10種のボタニカル。デザートのアイスクリームにかけて味変に 楽天市場で探す

お店情報

店名 山﨑(やまざき)
ジャンル 日本料理、海鮮
住所 東京都港区西麻布1-15-3 西麻布UOUビル1F
アクセス 東京メトロ千代田線「乃木坂」駅から徒歩9分(約600m)/日比谷線「六本木」駅から徒歩12分/日比谷線「広尾」駅から徒歩15分
電話 03-6812-9848
営業時間 火〜土 17:30〜23:00(17:30開始・20:30開始の2部制)
定休日 日曜・月曜
席数 10席(カウンターのみ・個室なし)
今回のコース おまかせコース44,000円(税込・サ別)〜
予約 完全予約制(OMAKASEでネット予約可・予約手数料390円/席)
支払い カード可(VISA・Master・JCB・AMEX・Diners)/電子マネー・QRコード決済は不可
駐車場 なし(全席禁煙)
オープン 2018年8月23日

行く前に知っておきたいこと

  • 完全予約制・カウンター10席のみ。空席情報は公式インスタグラムで公開されています
  • ネット予約はOMAKASEから。枠は一定期間ごとの受付で、予約時に1席あたり390円の手数料がかかります
  • 17:30開始と20:30開始の2部制。長いコースなので、開始時刻に遅れないように
  • キャンセル料が早めに発生します。7日前からのキャンセル・人数変更でコース料金の50%、4日前以降は100%
  • メニューはおまかせコースのみ。四季折々の野菜と旬の魚介で組まれます
  • コース代金は食材で上下します。蟹などの仕入れ状況によって目安5,500円ほど上がることがあると案内されています
  • 日本酒もワインも揃っています。銘柄はその日によって変わるので、スタッフに相談するのがおすすめ
  • 日曜・月曜は同じ場所で「歩味」が営業しています。住所も電話番号も山﨑と同じです
  • 最寄りは乃木坂駅で徒歩9分。六本木駅・広尾駅からも歩けますが、駐車場はありません

山﨑 まとめ

初夏の食材をたっぷりと使い、一皿ごとの量も満足感のあるコースでした。特に印象的だったのは、素材の持ち味を損なうことなく、藁や炭火、麹、こぶみかん、黒にんにくといった香りを重ねていること。
組み合わせには意外性がありますが、奇をてらった印象はなく、食べたときにはひとつの味としてまとまります。

以前訪れたときと同じく、味の濃淡や温度、食感の流れも絶妙。日本料理としての端正さと、山﨑さんならではの自由な感性を同時に楽しめる一軒です。
季節を変えて、また訪れたくなるお店でした。

 

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この記事を書いた人

センスのいい店と、美味しい時間。東京を中心に、静岡・関西まで1,000軒以上を訪ね歩いています。掲載しているお店は、すべて自分が訪問し、撮影したものです。おいしかったものは、おいしかったと。好みと違ったものは、そう書きます。

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