完全紹介制の名店 山梨・韮崎「TSUSHIMI」へ

今回訪れたのは、山梨県韮崎市にある「TSUSHIMI(ツシミ)」。
山梨の豊かな自然に囲まれた場所に佇む、1日1組限定のレストランです。
以前からずっと気になっていたお店のひとつで、今回ようやく訪れることができました。
TSUSHIMIでいただけるのは、野菜を主役に据えた独創的なコース料理。
一般的なレストランでは肉や魚がメインとなることが多いですが、ここではその関係が逆転。
山梨を中心に集められた多種多様な野菜にスポットを当て、それぞれの個性を引き出した料理が次々と登場します。
しかも、食事は15時頃から始まり、約5時間。
料理を食べるためだけに訪れるというよりも、この場所で過ごす時間そのものを楽しみに行くようなレストランです。
「TSUSHIMI」のスタイル

TSUSHIMIは、2022年に山梨県韮崎市でオープンしたレストラン。
シェフを務めるのは、對馬亨(つしま とおる)氏です。
大きな特徴となっているのが、「日本の森を食べる」という世界観。
山梨の生産者から届く野菜や山菜、ハーブなどを中心に、肉や魚といった食材を組み合わせながら、一つのコースを構成しています。
そして、TSUSHIMIを語るうえでもうひとつ印象的なのが、営業期間があらかじめ決められていること。
2022年のオープンから10年間、2032年に幕を閉じる予定となっています。
永遠に続くことを前提としたレストランではなく、限られた時間の中で変化し続ける場所。
「いつか行ってみたい」と思っていると、その“いつか”には期限があります。
さらに営業は1日1組限定。
その日のゲストのためだけに料理と空間が用意されるという、非常に贅沢なスタイルです。
1日1組だからこその特別な空間


店内もとても印象的。
華美な装飾で特別感を演出するのではなく、自然を身近に感じられる落ち着いた空間です。
そして何より、この日のゲストは自分たちだけ。
ほかのお客さんを気にすることなく、ゆったりと料理や会話を楽しめるのは、1日1組限定だからこそ。

まずはウェイティングスペースで飲み物をいただきます。
緑いっぱいの環境で、もうこれだけで気持ちが良いです。
約5時間のコースとペアリング

食事時間は圧巻の約5時間。
15時から始まり、終わるのは20時過ぎ。
料理にはペアリングがついて、アルコール・ノンアルコールともに60,000円(税込)という価格です。
約5時間という時間を聞くとかなり長く感じますが、実際に料理が始まると、一皿一皿を楽しんでいるうちに時間が過ぎていきます。
食事の途中で変化していく外の景色や光まで含めて、ひとつの体験として記憶に残る空間でした。
“森のアロマ”(山梨 韮崎)

コースの始まりは「森のアロマ」から。
ハーブの爽やかな香りがふわりと広がり、わずかに塩気も感じます。
料理をいただく前から、山梨の自然を五感で感じさせてくれます。
茗荷だけ(山梨 宮久保)

宮久保で採れた茗荷はフリットに。
サクッと軽やかな衣の中から、茗荷らしい清涼感のある香りとほのかな苦味が広がります。
猪を合わせたタルトとともにいただくことで、野趣のある旨味に茗荷だけの爽やかさが重なり、最初からTSUSHIMIらしい組み合わせ。サマートリュフが香ります。
かつお菜花・せり・空豆・胡瓜

春から初夏の野菜を使った料理が続きます。
かつお菜には甘海老とキャビア、空豆にはブリオッシュなど、それぞれの野菜を主役にしながら異なる食材を組み合わせた構成。
青々とした香りやほろ苦さ、甘みなど、この季節ならではの野菜の個性が次々と現れます。

ペアリングはアルコールでお願いしました。安心院のスパークリングワイン。
新玉ねぎ(山梨 白州)

じっくりとローストされた白州の新玉ねぎに、渡り蟹の内子を合わせた一皿。
火を入れることで引き出された新玉ねぎの瑞々しい甘みに、内子の濃厚なコクと旨味が重なります。
シンプルな「新玉ねぎ」というメニュー名からは想像できない、奥行きのある味わいが印象的。

TSUSHIMIオリジナルの白ワイン。
ロケーションが良すぎて、ただワインを置いているだけでも映えますね。
ヤングコーン(山梨 甲斐)

甲斐のヤングコーンにはミル貝を合わせて。
ヤングコーンの若々しい甘みと香ばしさに、ミル貝ならではの食感と海の旨味がアクセント。
野菜と魚介、異なる素材の持ち味を生かしながら、一皿としてきれいにまとまっています。
蕪(山梨 北杜)

北杜の蕪とスッポンを合わせたスープ。
やわらかな蕪の甘みに、スッポンから引き出した滋味深い旨味がじんわりと重なります。
派手さではなく、身体に染み込んでいくような優しい美味しさ。
素材の持つ力を丁寧に引き出した一皿でした。
どんこ椎茸(山梨 宮久保)

肉厚などんこ椎茸には鴨肉を合わせ、カツレツ仕立てに。
椎茸から溢れる旨味に鴨の力強いコクが重なり、野菜が主役というTSUSHIMIの考え方を象徴するような料理。
肉料理を食べているような満足感がありながら、記憶に残るのはあくまでも椎茸の存在感です。

この甲州 共栄堂ワイナリーのロゼワイン K25HR_RZがとても美味しくて。
香りが良く飲みやすくて気に入りました。
Noen ver.2(山梨)

約30分の休憩を経て提供されるのが、TSUSHIMIを代表するスペシャリテ「Noen ver.2」。
飲食店で「休憩」があるのは初めてです…!
目の前に現れた瞬間、その圧倒的なビジュアルに驚かされます。
一皿の中に並ぶのは、約100種類もの野菜。
生、発酵、揚げるなどさまざまな調理法が用いられ、それぞれの野菜に異なる味わいと食感が与えられています。

これだけの種類が盛り込まれていながら、一つひとつの野菜の個性が埋もれていないのがすごいところ。
少しずつ食べ進めるたびに香り、苦味、甘味、酸味、食感が変化して、まるで一皿の中を散策しているような楽しさがあります。
「野菜が主役」というTSUSHIMIの世界観を、これ以上ないほど体現した一皿でした。

山独活(山梨 白州)

白州の山独活には鮎を合わせてご飯に。白州のコシヒカリを使用しています。
山独活特有の爽やかな香りとほろ苦さに、鮎の香ばしさや独特の風味がよく合います。
山と川、異なる場所で育つ素材が一つになり、山梨の自然をそのまま味わっているような余韻の残る一品。

コールラビ(山梨 甲斐)

コールラビにはクエを合わせて。
瑞々しくほんのり甘みを持つコールラビに、クエの上品で力強い旨味が寄り添います。
魚を主役にするのではなく、あくまで野菜を中心に据える組み立てが印象的。

ペアリングはワインだけでなく、日本酒の仙禽も。
Bread と山胡桃(山梨 韮崎)

TSUSHIMIのBreadは、山梨県内の小麦をブレンドし、自家培養の酵母を使ってじっくりと発酵させたもの。
噛むほどに小麦の香りと甘みが広がり、山胡桃の香ばしさも良いアクセントに。
料理の合間にいただくパンでありながら、これ自体がしっかりと記憶に残る一品です。
淡竹(山梨 宮久保)

宮久保の淡竹にはチーズを合わせて。
淡竹のシャキッとした心地よい歯触りと繊細な甘みに、チーズのコクと塩味が重なります。
筍そのものの風味を残しながら、乳製品を合わせることでぐっと奥行きのある味わいに。

ブラッドオレンジ(愛媛 八幡浜)

デザートはモロという品種のブラッドオレンジ。
濃厚な甘みの中に心地よい酸味とほろ苦さがあり、長いコースの終盤をすっきりと整えてくれます。
鮮やかな香りも印象的で、口の中が一気にリフレッシュ。
エルダーフラワー(山梨 宮久保)

続いて、宮久保のエルダーフラワーを使ったアイス。
エルダーフラワーならではの華やかで爽やかな香りが広がり、軽やかな余韻。
森や草花の香りから始まったコースが、最後に再び植物の香りへと戻ってくるようで、TSUSHIMIらしい締めくくりです。

食後酒として白州を。
お茶菓子

約5時間にわたるコースの最後は、小さなお茶菓子とともに。
一皿一皿を振り返りながら過ごすこの時間は、満足感とともに「もう終わってしまう」という少し寂しさも。
野菜の美味しさはもちろん、その土地や季節、香り、食感までを一つのストーリーとして味わったような、余韻の残るコースでした。
2032年までに訪れたいレストラン
1日1組限定という特別なスタイルだけでなく、野菜を中心に組み立てられた料理、山梨の自然、そして約5時間をかけてゆっくりと流れていく時間。
TSUSHIMIは「美味しい料理を食べた」という感想だけでは表現しきれないレストランでした。
特に印象的なのは、料理とその土地との距離の近さ。
山梨で育った野菜や山菜、ハーブを味わいながら、そのすぐそばにある森や自然を眺める。
その場所で食べること自体に意味があるように感じられます。
そして、このレストランが存在するのは2032年まで。
いつでも行ける場所ではなく、1日1組という限られた席だからこそ、気になっている方にはぜひ一度体験してみてほしい一軒です。
食事を目的に山梨を訪れたくなる、記憶に残るレストランでした。
予約方法
完全紹介制
店舗情報
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