銀座一丁目駅からすぐ、銀座二丁目のビルの地下にある日本料理店「銀座 しのはら」へ。
これまでにも華やかな八寸や太巻き、フォアグラの最中といった印象深い料理をいただいてきましたが、季節が変わればコースの表情も大きく変わります。今回は冬の訪問。雪景色を表現した八寸をはじめ、脂ののった鰤や虎河豚、鱈の白子、ツキノワグマ、すっぽんなど、冬ならではの食材が登場しました。
過去2回の訪問記事もあわせてどうぞ。


滋賀から銀座へ。篠原武将氏が紡ぐ日本料理
店主の篠原武将氏は、1980年滋賀県湖南市の生まれ。大阪の「熊魚菴たん熊北店」や京都の「山玄茶」などで研鑽を積み、27歳で独立しました。
最初に自身の店を構えたのは、故郷である滋賀県湖南市。周囲に田畑や住宅が広がる場所でありながら、その料理を目当てに全国から客が訪れる店となり、9年ほど営んだのち2016年に銀座へ移転しています。
『ミシュランガイド東京2026』では二つ星。
食べログでも「The Tabelog Award」のGoldを2024年から3年連続で受賞しています。
篠原氏の料理から感じられるのは、京都で培った端正な日本料理の技術だけではありません。
故郷・滋賀の里山を思わせる山菜や川魚、野趣のあるジビエも取り入れながら、日本の季節や行事を料理の中に描いていきます。なかでも象徴的なのが、月ごとに趣向を変える八寸。器や草花、盛り付けまで含めて季節の情景を表現し、ひと皿の中に日本の文化や物語を映し出します。
大きな鍋を客同士で囲む料理も、しのはららしさを感じるもの。
同じ料理を分かち合いながら、その場に集まった人たちがひとつになる「一座建立」の考えが息づいています。
温かさのある銀座のカウンター
店内には白木のカウンターが13席広がり、老舗の日本料理店らしい凛とした空気が漂っています。
一方で、過度に緊張させる雰囲気ではありません。篠原大将は料理や食材について丁寧に説明しながら、客との会話も楽しませてくれます。
その日の食材や季節の風習を語る姿からは、料理を味わうだけでなく、その背景まで持ち帰ってほしいという思いが伝わってきます。
一品ごとの完成度はもちろんですが、大将を中心に生まれる温かな空気も、何度も訪れたくなる理由のひとつ。今回も華やかさと親しみやすさが同居する、しのはらならではの時間を楽しみました。
冬のおまかせコース
この日合わせたのは、北海道・仁木町の NIKI Hills Winery がつくるノンアルコールのスパークリング「FRUITY WEEKEND」。
アルコール分0.00%で、淡いオレンジがかった色合いです。日本酒もワインも揃うお店ですが、飲まない日でもきちんと一杯を用意してくれるのはありがたいところでした。
この日の一杯
同じ銘柄が手に入らないこともありますが、造り手の目星をつける手がかりにどうぞ。
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NIKI FRUITY WEEKEND(ノンアルコール・スパークリング)
アルコール分0.00%。この銘柄そのものは通販で見つけられませんでした
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12月の八寸「雪まろげ」
コースの始まりを飾るのは、しのはらを象徴する八寸。今回のテーマは「雪まろげ」です。
雪まろげとは、雪を転がして丸く大きくしていく雪遊びのこと。冬の季語でもあり、器の中には雪景色を思わせる情景が広がっています。砕いた氷の上に雪玉を置き、松と赤い実、色づいた葉をあしらった設えは、運ばれてきた瞬間に声が出る華やかさでした。
いただいたのは、青味大根の金山寺味噌添え、数の子、菜の花の胡麻和え、漬けチーズの小鰹まぶし、サーモンと黄身酢。
少量ずつ盛られた料理は味も食感も異なり、ひと品ずつ箸を進めるたびに印象が変わる八寸でした。
ただ、入店から八寸が始まるまで20分ほど時間がかかったので、もう少し提供が早いと嬉しかったです。
渡り蟹のブランデー醤油漬け
渡り蟹を、ブランデーを加えた醤油だれに漬けた一品。蟹の身からは濃厚な甘みが感じられ、味噌のコクもしっかり。
そこへブランデーの芳醇な香りと醤油の旨味が重なります。味わいは濃厚ですが、酒の香りによって重たくなりすぎず、蟹の余韻が長く続きます。
海老芋の唐揚げ
続いて、海老芋の唐揚げ。四角く切った海老芋の表面にこんがりと色がつき、断面には層になった繊維が見えます。
海老芋は里芋の仲間「唐の芋」を、7〜8月に何度も土寄せして育てたもの。海老のように反った形と縞模様が名前の由来で、京都・大阪・兵庫の伝統野菜に認定されています。旬は11月から1月にかけて、まさに今の時期です。
鰤の味噌幽庵焼きと大根の柚子釜
脂ののった鰤を味噌幽庵焼きにし、大根とともに柚子釜へ。蓋を開けると、温かな湯気とともに柚子の清々しい香りが立ち上がります。
鰤はふっくら、豊かな脂と味噌のまろやかな甘みがよく合います。大根には鰤の旨味が染み込み、噛むほどに出汁がじんわり。柚子の香りが鰤の脂を軽やかに整え、冬らしい温かさを感じる料理でした。
太巻き
しのはらを代表する料理のひとつ、具材をたっぷりと巻き込んだ太巻き。
今回は赤身、中トロ、アオリイカ、胡瓜、大根、べったら漬け、玉子真薯、雲丹が使われています。大将が目の前で巻き上げ、厚く切ったものを手渡しで。
これだけ多くの具材が入っていながら、それぞれの味や食感が埋もれません。
ひと口の中でさまざまな風味が広がる、贅沢な太巻きです。
豊後水道の鯖、瀬戸内の赤貝
お造りは、豊後水道の鯖と瀬戸内の赤貝。冬の鯖は脂がのりながらも身が締まり、なめらかな脂の甘みと鯖らしい旨味をしっかりと感じられます。
赤貝は肉厚で、噛むと小気味よい歯応え。磯の香りとほのかな甘みが広がり、鯖とは対照的な食感を楽しめました。
真鯛と東寺湯葉のお椀
澄んだ出汁に真鯛と東寺湯葉を合わせ、砕いた蕪のみぞれ仕立てに。東寺湯葉の中には、鱈の白子と海老のすり身が包まれています。
端正な出汁に真鯛の旨味が溶け込み、蕪のみぞれがやさしい甘みと柔らかな口当たりを加えます。湯葉の内側から現れる白子はとろりとなめらか。海老の甘みと弾力も加わり、穏やかな見た目以上に味わいには奥行きがあります。
虎河豚の竜田揚げ
虎河豚は、香ばしい竜田揚げに。衣は軽やかに揚がり、中の身は弾力がありながらもふっくらしています。
噛むほどに虎河豚の淡泊な身から旨味が現れ、衣の醤油の香ばしさとよく合います。シンプルですが、この日一番印象に残りました。
あんぽ柿とフォアグラの最中
しのはらの定番料理、フォアグラ最中。香ばしく軽い最中に、フォアグラとあんぽ柿を挟んでいます。
フォアグラの濃厚なコクと塩気に、あんぽ柿のねっとりとした甘み。パリッとした最中の皮が食感を軽くし、フォアグラの余韻を残しながらも重たさを感じさせません。何度いただいても記憶に残る組み合わせです。
合鴨とツキノワグマのお鍋
合鴨とツキノワグマに、青梗菜と豆腐を合わせた冬のお鍋。ツキノワグマの脂には澄んだ甘みがあり、野趣を感じさせながらも重さや癖は控えめ。
合鴨の濃い旨味も重なり、素材そのものはシンプルながら満足感があります。
焼きすっぽんとシラスの土鍋ご飯
食事は、焼きすっぽんとシラスを使った土鍋ご飯。炊き上がりを土鍋のまま見せてくれるのですが、刻んだ青菜の上に卵黄の醤油漬けが並んだ眺めが見事です。
香ばしく焼いたすっぽんの旨味に、シラスの穏やかな塩気が重なります。炊きたてのご飯は粒が立ち、すっぽんの風味を受け止めながらも重たくなりません。
途中で卵黄の醤油漬けを割ると、濃厚なコクが広がり、味わいが一段とまろやかに。
添えられた重ね漬けの歯触りと塩気も心地よく、箸が進む土鍋ご飯でした。
鴨熊鍋の出汁ラーメン
先ほどの鴨熊鍋の出汁を使ったラーメン。合鴨とツキノワグマの旨味が溶け込んだスープはコク深く、それでいて後口は意外なほど澄んでいます。
鍋として味わったときよりも出汁の輪郭がはっきりと感じられ、鴨の旨味と熊の脂の甘みが麺によく絡みます。
栗の葛焼き
甘味は、栗を使った葛焼き。表面は香ばしく、中はもっちりとなめらか。
葛のやさしい口当たりの中から、栗のほっくりとした甘みが広がります。
最後はお抹茶のほろ苦さで口の中がすっきりと整いました。
お店情報
| 店名 | 銀座 しのはら |
| ジャンル | 日本料理 |
| 住所 | 東京都中央区銀座2-8-17 ハビウル銀座II B1F |
| アクセス | 東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅から徒歩2分(約150m)/銀座線ほか「銀座」駅から徒歩3分 |
| 電話 | 03-6263-0345 |
| 営業時間 | 月・水・金 17:00〜23:00/火・木・土 12:00〜15:00、17:00〜23:00(17時・20時30分の一斉スタート、昼は12時スタート) |
| 定休日 | 日曜 |
| 席数 | 13席(カウンターのみ・個室なし) |
| コース | おまかせコース35,000円(税込・サービス料別)※季節の食材による追加メニューあり |
| 予約 | 完全予約制(OMAKASEのほか、電話は12:00〜15:00) |
| 支払い | カード可(VISA・Master・JCB・AMEX)/電子マネー・QRコード決済は不可 |
| 駐車場 | なし(全席禁煙) |
| オープン | 2016年10月6日(滋賀県湖南市から移転) |
行く前に知っておきたいこと
- 予約はOMAKASEから。毎月25日の午前0時に次回分の枠が開放されます
- 17時と20時30分の一斉スタート。昼は火・木・土のみ12時スタートです
- カウンター13席のみ・個室なし。大将の説明が聞こえる距離で食事できます
- 八寸は月ごとにテーマが変わります。器や設えまで含めて季節を映すので、時期を変えて訪れる楽しみがあります
- コースは35,000円(税込)にサービス料が別途。季節の食材による追加メニューが出ることもあります
- コース料金や予約開始日は変わることがあります。来店前に最新の案内を確認してください
銀座 しのはら まとめ
華やかな食材を使いながらも、料理の根底にあるのは、日本の季節や郷土の文化を楽しんでもらおうという思い。
大将の説明や会話を通して料理の背景を知ることで、味わいがさらに印象深いものになります。
料理、器、設え、そしてカウンターに流れる空気まで含めて楽しめる日本料理店。
以前は予約困難店のイメージでしたが、今はだいぶ予約が取りやすくなったように思います。
