鮮烈な“食の劇場体験”を神楽坂で──SECRETO
神楽坂の住宅街にひっそりと佇むレストラン『SECRETO(セクレト)』。
その扉の先には、想像を超える食体験と“秘密基地”のような非日常空間が広がっていました。
まるで舞台演出のように始まる夜
開場は18時40分。店の扉が開くと、まずはムーディーなウェイティングバーへ。
ウェルカムドリンクを受け取り、しばしその空間を楽しみます。
そして19時になると、全員が揃ったタイミングで“秘密の通路”と呼ばれる細い廊下を通り、ダイニングスペースへ移動。
L字型のカウンターの奥には一段高くなったシェフズテーブルが設けられ、まるでステージと観客席のような構造になっています。
ここから、ショーが幕を開けます。
オーナーシェフ・薮中 章禎 氏
1975年生まれ。国内のホテル・レストランでキャリアを積んだのち、フランスの三ツ星「ル プチニース」や、スペインの伝説的レストラン「エル・ブジ」「ドス・パリージョス」で修業。
帰国後はマンダリンオリエンタル東京「タパスモラキュラーバー」のスーシェフを経て、2017年に『SECRETO』をオープンしました。
豊富な海外経験に裏打ちされた料理の数々は、どれも完成度が高く、独創的でありながら味の軸がぶれない確かさがあります。
食材の妙、そして“薮中シアター”の魅力
料理は石川県・能登出身のシェフならではの、北陸の食材が中心。
コース料金はそこまで高額でないので予算的な制約はあっても、その中で最大限のパフォーマンスを発揮する技術に驚かされます。
例えば、ドイツのMonkey47というジンを使った一杯目のカクテル。
これは薮中シェフがスペイン修業時代に出会ったジンをベースにしたもので、スッキリとした甘さが印象的。
ディナーの幕開けにぴったりの一杯です。
ディナーコース
コースはお料理、ドリンク込みで27,500円(税込)。
素材の組み合わせが時に意表を突きつつも、味は王道。
土台となる技術の確かさがあるからこそ、奇抜さが“遊び”として成立しているのだと感じさせられます。
秘密のハート
定番のスタート。手で摘んで、一口でいただきます。
噛むとカカオバターのコーティングがパリッと砕け、中から蜜柑と苺の甘酸っぱいジュースがぶわっと溢れ出ます。
ブイヤベースドッグ、 ペコロス・能登牛ほほ肉・トリュフ
右は一見普通のアメリカンドッグのようですが、口に含むと甲殻類の香りが爆発します。
中には海老、蟹を使用したブイヤベースが入っています。
左は、最初はトリュフの香りがふわっと。
ローストされた甘いペコロスに、頬肉のコクと旨み。
小さいながら、インパクトのあるお料理です。
フラン・牡蠣・白子・毛蟹・ココナッツ
ココナッツ香るフランは、タイカレーを思わせる味わい。
白子はクリアでなめらかです。毛蟹も旨味たっぷりで美味しい。
合わせるお酒は金瓢 白駒 大吟(輪島)。
フォアグラフレンチトースト
毎回の楽しみ。
液体窒素で凍ったフォアグラを藪中シェフが目の前で削る、世界一軽いフレンチトーストです。
ふわっとした食感とやさしい甘み、スッと溶けていくフォアグラの余韻がたまりません。
シェフのお母様“信子”の柚子ジャムも添えられています。
酸味のアクセントがよく合います。
お酒もいつも通り、満寿泉 貴醸酒(富山)です。甘さがフレンチトーストに合います。
能登阿岸の七面鳥・スッポン・柚子
七面鳥、蛤、すっぽんで出汁を取った贅沢なラーメン。
西早稲田の「ラーメン 巌哲」がセクレトのためだけに打った麺を使用しています。
スープはスッキリとしつつもコクがあり、コラーゲン感たっぷり。
胸、もも、葱、柚子を自分でトッピングする楽しさもあります。
フェイクビールはピリリと刺激的な生姜シロップにのジンバック。
遊び心が楽しいです。
サラダニソワーズ・マグロ・ハーブ
セクレト風ニースサラダ。彩りがとても良く、目にも楽しい一皿です。
金時人参やインカの目覚めなど、野菜は能登の高農園さん中心のもので、ハーブドレッシングで和えています。
氷見の鮪は脂が乗っていて存在感抜群。
合わせるのは、San Jacopo Toscana Bianco
(イタリア白 トスカーナ)
ブドウ品種:ヴェルメンティーノ
キジハタ・リゾット・ピストゥ・菜花
蒸したキジハタを載せたリゾット仕立て。能登のお米「カルナローリ米」を使用しています。
スープは浅利と七面鳥出汁で旨みたっぷり。バジルとパルミジャーノの香りも。
能登牛プレミアムイチボ・西京味噌・醤・石焼き甘太くん・芽キャベツ
ゆっくり火を入れたイチボは、味噌により旨みが凝縮されてやわらか。キメも細かいです。
ソースはフォンドボーベースに醤を加えたもの。
ちなみに「甘太くん」は高糖度のさつまいも品種のことです。
|
サラダやバゲット、トリュフバターのエスプーマも。
ふわふわのトリュフバター、大好きです。
お肉に合わせてL.G. Leza Garcia. Tinto(スペイン赤 リオハ)
ブドウ品種:テンプラニーリョ
土鍋ご飯・能登寒鰤・大根
温泉卵も混ぜ込んでいます。
ぶり大根の組み合わせですが味付けは甘くなく、コースの最後としてはアッサリでとても食べやすいです。
大根の瑞々しさも味わえ、ついお代わりしてしまいました。
土鍋ごはんに合わせて大葉とトマトの赤だしを。
大葉とトマトもお味噌汁に合うんですね。
バターサンド・プラリネ・ナツメヤシ
能登の塩を使用した塩バターサンド。柚子風味です。
シェフのお母さま“信子”の梅酒がまた美味しい。
メローゴールド・林檎・いちご・-196°c
定番の液体窒素を使ったデザート。メローゴールドといちごのシャーベットです。
液体窒素のパフォーマンスは何度体験しても、やはり盛り上がってしまう瞬間です。
フレッシュハーブティー
ミント、ローリエ、レモングラスをブレンドしたハーブティー。
最後に待つ、もうひとつの“秘密”
コースが終盤に近づくころ、ディナーのフィナーレを飾るサプライズも。
詳しくは書きませんが、秘密の演出が用意されていて、最後の最後まで“体験”が続きます。
SECRETO(セクレト) まとめ
大人の好奇心をくすぐる、美食とエンターテインメントの融合。
薮中シェフの地元・石川県能登の食材を中心に、季節を感じるこだわりの素材と驚きのあるお料理たち。
音楽や照明の演出や、藪中シェフのトークにどんどん魅了されていきました。
定期的に訪れたい唯一無二の一軒です。
予約方法
毎月1日の12時に、翌々月分の予約が開放されます。
https://www.tablecheck.com/ja/shops/secreto-tokyo/reserve